「経理は安定しているけれど、年収はあまり上がらないのでは?」と思っている人は多いかもしれません。この記事では、厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査(2026年3月公表)を使い、会社のお金を扱う「経理・財務・経営企画」の仕事を、年収・年齢・経験年数のデータで整理します。
後半では、未経験から経理に入る道筋と、経理の経験を生かした次のキャリア(財務・経営企画・管理職、M&A・ファンド・事業再生などの専門職)もまとめます。
経理・財務・経営企画は何が違う?
3つとも「会社のお金」に関わる仕事ですが、見ている方向が違います。
| 仕事 | ひとことで言うと | 主な仕事の例 |
|---|---|---|
| 経理 | お金の動きを記録する | 日々の伝票・帳簿の記入、月ごとの締め、年に一度の決算、決算書の作成 |
| 財務 | 会社が使うお金を集めて回す | 銀行からの借入れ、資金繰りの管理、余ったお金の運用 |
| 経営企画 | 数字で計画を立てる | 中期経営計画・予算づくり、経営会議の資料、新しい事業の検討 |
経理で決算や数字のルールを身につけてから、財務や経営企画へ仕事を広げる人もいます。ただし、会社の規模によっては1人が3つを兼ねることも、部署が細かく分かれていることもあります。
統計では何と呼ばれる?(数字を読む前に)
賃金構造基本統計調査には「経理」「経営企画」という名前の職種はありません。厚生労働省の「役職及び職種解説」をもとに、近い職種を次のように読み替えています。
| ふだんの呼び方 | 統計の職種名 | 含まれる仕事の例(職種解説より) |
|---|---|---|
| 経理 | 会計事務従事者 | 経理事務員、決算係事務員、現金出納事務員、伝票整理事務員、税理士事務所の事務員など |
| 経営企画 | 企画事務員 | 企画係事務員、プランナー、マーケティング・リサーチャー、商品開発部員など |
| 財務 | (単独の職種なし) | 会計事務・企画事務などに分かれて入る |
ここが大事
- 「企画事務員」は経営企画だけでなく、市場調査や商品開発の人も含む広い分類です。経営企画だけの平均ではありません。
- 財務だけを取り出した数字は、この統計にはありません。
職種別の推計年収
推計年収は、2025年6月の月給(残業代を含む「きまって支給する現金給与額」)×12+前年1年間の賞与で当サイトが計算した概算です。
| 職種(統計の名前) | 推計年収 | 月給(残業代込み) | 年間賞与など | 平均年齢 |
|---|---|---|---|---|
| その他の経営・金融・保険専門職業従事者 | 1,135万円 | 74.3万円 | 243.5万円 | 39.4歳 |
| 管理的職業従事者(部長・課長など) | 967万円 | 60.0万円 | 247.1万円 | 51.5歳 |
| 公認会計士,税理士 | 811万円 | 57.1万円 | 125.3万円 | 42.2歳 |
| 企画事務員(経営企画など) | 737万円 | 46.5万円 | 179.4万円 | 43.0歳 |
| 事務従事者(事務の仕事全体) | 541万円 | 36.0万円 | 109.7万円 | 44.3歳 |
| 会計事務従事者(経理など) | 512万円 | 34.3万円 | 101.2万円 | 44.0歳 |
経理(会計事務従事者)は512万円で、事務の仕事全体の541万円と近い水準です。経営企画を含む企画事務員は737万円で、同じ事務の仕事でも200万円以上の差があります。
いちばん上の「その他の経営・金融・保険専門職業従事者」は、経営コンサルタント、証券アナリスト、アクチュアリー、社会保険労務士、中小企業診断士などが入る分類です(公認会計士・税理士は別の分類)。
年齢で見る年収カーブ
| 年齢 | 会計事務従事者(経理など) | 企画事務員(経営企画など) |
|---|---|---|
| 20〜24歳 | 353万円 | 408万円 |
| 25〜29歳 | 424万円 | 530万円 |
| 30〜34歳 | 484万円 | 644万円 |
| 35〜39歳 | 536万円 | 710万円 |
| 40〜44歳 | 540万円 | 746万円 |
| 45〜49歳 | 567万円 | 789万円 |
| 50〜54歳 | 567万円 | 922万円 |
| 55〜59歳 | 597万円 | 957万円 |
会計事務従事者は30代後半までにしっかり上がり、その後はゆるやかな伸びになります。企画事務員は50代まで上がり続け、35〜39歳で比べると差は174万円(当サイト計算)でした。
ただし、どちらも多くの人の平均です。企業規模や役職、業界によって実際の金額は大きく変わります。「経理だから上がらない」と決めつけず、どんな会社・どんな役割に進むかで変わる、と読むのがよいでしょう。
経験年数で見る月給
次は、その職種での経験年数ごとの所定内給与額(残業代・賞与を含まない月の給与)です。この調査の経験年数は「その職種の仕事に従事した年数」で、会社が変わっても通算します。ほかの仕事から移ってきたばかりの人は「0年」に入ります。
| その職種の経験 | 会計事務従事者 | 企画事務員 |
|---|---|---|
| 0年 | 27.9万円 | 40.6万円 |
| 1〜4年 | 28.5万円 | 39.9万円 |
| 5〜9年 | 31.1万円 | 41.4万円 |
| 10〜14年 | 32.3万円 | 44.2万円 |
| 15年以上 | 35.9万円 | 48.1万円 |
- 経理(会計事務):経験を積むほど月給が上がる、わかりやすい形です。
- 企画事務:経験0年の時点で40.6万円と高めです。理由まではこの統計からわかりませんが、別の仕事で経験を積んでから企画に移った人も0年に数えられる点は押さえておきましょう。
働き方の数字(残業・年齢・人数)
平均年齢は会計事務従事者44.0歳、企画事務員43.0歳。働く人の数は会計事務がおよそ46.6万人、企画事務がおよそ49.3万人で、どちらも大きな職種です。
超過労働時間は2025年6月の1か月分です。経理は決算の時期に忙しくなりやすいと言われますが、その時期の働き方はこの数字には表れません。繁忙期の残業は、求人票や面接で確かめましょう。
資格:簿記・公認会計士・USCPA
日商簿記(日本商工会議所)
| 級 | 対象の試験 | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 3級 | ネット試験(2025年4月〜2026年3月) | 276,477名 | 112,797名 | 40.8% |
| 2級 | ネット試験(2025年4月〜2026年3月) | 141,072名 | 46,351名 | 32.9% |
| 1級 | 第173回(2026年6月14日) | 9,806名(実受験者) | 2,076名 | 21.2% |
3級→2級→1級と段階を踏めるので、未経験の人が「数字のルール」を学ぶ入口として使いやすい資格です。
公認会計士試験(公認会計士・監査審査会)
令和7年の試験は出願者22,056人、最終合格者1,636人でした。合格者の6割余り(999人・61.1%)は学生・専修学校などの受講生で、「会社員」と申告した人は89人(5.4%)でした(出願時の申告)。会社員として働きながら合格する人は少数です。
USCPA(米国公認会計士)
日本の公認会計士とは別の、米国の資格です。全米州政府会計委員会(NASBA)の案内では、受験の手続きは州(法域)を選んで進める形で、条件は州ごとに確かめる必要があります。
未経験からのキャリアの道筋
- 簿記で基礎を学ぶ:仕訳や決算書のしくみなど、数字のルールを身につける。
- 経理の実務を経験する:日々の記録 → 月ごとの締め → 年に一度の決算までを一通り経験する。
- 財務・経営企画へ広げる:決算を経験したあとに、資金や計画の仕事へ範囲を広げる。
これは道筋の一例です。営業や事業部など、ほかの職種で数字に触れてから企画に移る道もあります。
経験者のキャリアの道筋
| 方向 | 主な仕事 | 統計で近い分類(推計年収) |
|---|---|---|
| 財務 | 資金を集める・回す | (単独の職種なし) |
| 経営企画 | 計画と予算を担う | 企画事務員(737万円) |
| 管理職・CFO | 経理部長などから財務の責任者へ | 管理的職業従事者(967万円) |
| ファイナンス専門職 | M&A・ファンド・事業再生など | その他の経営・金融・保険専門職業従事者(1,135万円)※近い分類 |
管理的職業従事者の月の超過労働は2時間ですが、管理職は残業の扱いが一般の社員と違う場合があります。この数字だけで「管理職は働く時間が短い」とは読めません。
M&A・ファンド・事業再生などファイナンス専門職への道
経理・財務・経営企画の経験の先には、会社の外から「お金の判断」を支える専門職もあります。
- M&A(買収・合併)のアドバイザー:会社を買う・売る側の検討を手伝い、相手の会社の価値や条件を調べる。
- ファンド(PE・VCなど):お金を集めて会社に投資し、投資先の成長を支える。
- 事業再生:業績が苦しい会社の資金繰りや計画を立て直す。
- 経営コンサルタント:経営の課題を、数字と計画で解決する手伝いをする。
どれも、決算書を読む力、会社の価値やお金の流れを考える力が土台になります。経理で身につけた決算の知識や、経営企画で身につけた計画づくりの経験が生きやすい領域です。
統計で見るときの注意
- 賃金構造基本統計調査には、M&A・ファンド・事業再生の仕事だけを取り出した職種はありません。
- 近い分類の「その他の経営・金融・保険専門職業従事者」(推計年収1,135万円・平均39.4歳)は、社会保険労務士・アクチュアリー・中小企業診断士なども含む平均です。この領域の年収を示す数字ではありません。
こうした経営×ファイナンス領域の求人は、一般の求人サイトでは見つけにくいこともあります。自分の経理・財務・企画の経験がどう評価されるかを知りたいときは、この領域に詳しい転職サービスに相談してみるのも一つの方法です。
経営×ファイナンス領域の転職相談「ヤマトヒューマンキャピタル」を見る(公式サイト) ›※広告(PR)リンクです。サービス内容・条件は申し込み前に公式サイトでご確認ください。
まとめ
- 経理(会計事務従事者)の推計年収は512万円。経験年数とともに月給が着実に上がる。
- 経営企画を含む企画事務員は737万円。年齢とともに大きく伸び、30代後半で差は174万円(当サイト計算)。
- 財務やM&A・ファンドの仕事は単独の職種がなく、近い分類で読む必要がある。
- 未経験なら「簿記 → 経理の実務 → 財務・企画」、経験者なら「財務・企画・管理職・ファイナンス専門職」が次の選択肢。
出典・注意書き
基準日:2026年10月時点(賃金は令和7年賃金構造基本統計調査=2025年6月分の給与と2024年1年間の賞与。2026年3月24日公表)
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(職種)第1表 職種(小分類)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額:https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040421116
- 同 第2表 職種(大分類)別(事務従事者):https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040421117
- 同 第5表 職種(小分類)、年齢階級別:https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040421120
- 同 第14表 職種(小分類)、性、経験年数階級別所定内給与額:https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040421129
- 同 役職及び職種解説:https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040465352/調査の概要(経験年数の定義):https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040465348
- 日本商工会議所「簿記 受験者データ」(2026年10月29日確認):https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/candidate-data
- 公認会計士・監査審査会「令和7年公認会計士試験の合格発表の概要について」:https://www.fsa.go.jp/cpaaob/kouninkaikeishi-shiken/r7shiken/ronbungoukaku_r07/01.pdf
- NASBA「CPA Exam」:https://nasba.org/exams/cpaexam/
ご注意
- 数字は一般労働者(短時間労働者を除く)、男女計、企業規模10人以上、全産業の平均です。個人の年収や転職時の提示額を示すものではありません。業界・企業規模・役職・地域で大きく違います。
- 推計年収は「6月の月給(残業代込み)×12+前年の賞与」で当サイトが計算した概算で、国が公表した年収ではありません。
- 「経理=会計事務従事者」「経営企画=企画事務員」は当サイトの読み替えです。企画事務員には市場調査・商品開発なども含まれます。
- キャリアの道筋は当サイトの整理による一例で、特定の転職の結果を保証するものではありません。
- 資格の数字は各団体の発表時点のものです。最新の情報は公式サイトでご確認ください。