IT業界とひとことで言っても、中身はバラバラです。この記事では、IT業界を6つのエリアに分けた「業界地図」と、国の統計で見る年収・働き方のデータをもとに、どこに入るとどんな働き方になりやすいのかを整理します。

使っている数字は、厚生労働省・経済産業省の統計と、各社の決算短信・有価証券報告書などの一次資料だけです。

数字で見るIT業界(2025年)

まずは国の統計から。IT業界は、統計上の分類では「情報通信業」にあたります。厚生労働省の2025年の統計で、全産業の平均と比べました。

IT業界(情報通信業)全産業の平均
推計年収(賞与込み)約684万円約559万円
月の残業時間16.5時間13.2時間
離職率(1年間)10.0%11.4%

推計年収は全産業の平均より120万円ほど高い水準です。一方で、月の残業は全産業より少し多め。1年間に辞める人の割合(離職率)は全産業より低めです。「年収は高め、残業はやや多め、人がどんどん辞める業界ではない」という姿が見えてきます。

数字の読み方の注意

  • 対象は「一般労働者」(パート以外の、正社員・契約社員など)で、事業所規模5人以上の平均です。
  • 推計年収は、賞与込みの月平均の給与(現金給与総額)×12で計算した概算です。業界全体の平均で、個人の年収ではありません。年齢・職種・会社の規模で大きく変わります。
  • 離職率には定年退職なども含まれます。

IT業界地図2026

IT業界を6つのエリアに分けて、主な会社を売上の大きさで並べました。図の箱が大きいほど、売上が大きい会社です。

IT業界地図2026。通信キャリア・SIer・ITコンサル・Web・ネット・SaaS・SESの6エリアに主要企業を売上規模で配置し、NTTとNTTデータグループ(100%子会社)、ソフトバンクとLINEヤフー(親会社)の資本関係と、エリアごとの見通しを天気マークで示した図
箱の大きさ=売上の規模、矢印=資本関係、天気=当サイトの見通し。出典:各社の決算短信・有価証券報告書ほか(直近の通期・連結)

エリア別の主な会社と売上

売上は直近の通期・連結の数字です。決算期は会社ごとに異なります(億円は百万円を100で割って四捨五入)。

エリア会社決算期売上(億円)
通信キャリアNTT2026年3月期144,091
通信キャリアソフトバンク2026年3月期70,387
通信キャリアKDDI2026年3月期60,719
SIerNTTデータグループ2026年3月期50,046
SIerNEC(IT以外も含む)2026年3月期35,827
SIer富士通(IT以外も含む)2026年3月期35,030
SIer野村総合研究所2026年3月期8,147
SIerSCSK2026年3月期7,803
SIerTIS(2026年7月からTISI)2026年3月期5,965
Web・ネット楽天グループ2025年12月期24,966
Web・ネットLINEヤフー2026年3月期20,364
Web・ネットサイバーエージェント2025年9月期8,740
Web・ネットメルカリ2026年6月期2,293
SaaSSansan2026年5月期538
SaaSマネーフォワード2025年11月期503
SaaSfreee2026年6月期424
SaaSサイボウズ2025年12月期374

通信キャリア:桁違いの規模

一番大きいのが、ネットの土台をつくる通信キャリアです。NTTはおよそ14.4兆円、ソフトバンクはおよそ7.0兆円、KDDIはおよそ6.1兆円と、桁違いの規模です。

SIer:企業や役所のシステムを作る

次が、企業や役所のシステムを作るSIer(エスアイヤー)です。NTTデータグループはおよそ5.0兆円で、NTTの100%子会社です(2025年9月に完全子会社化)。NECはおよそ3.6兆円、富士通はおよそ3.5兆円ですが、どちらもIT以外の事業も含んだ全社の数字です。

Web・ネット:決算期は会社ごとに違う

楽天グループがおよそ2.5兆円、LINEヤフーがおよそ2.0兆円。LINEヤフーはソフトバンクが親会社にあたります(ソフトバンクとNAVERが50%ずつ持つAホールディングスが、議決権の62.4%を保有)。

ITコンサル・SaaS・SES

ITコンサルは、アクセンチュア・デロイト・PwC・アビームなどが中心です。日本での売上は公開されていないため、地図には売上を載せていません。

会社向けのソフトを月額で売るSaaS(サース)企業は、Sansanやマネーフォワードなど、売上は数百億円規模とまだ小さめです。エンジニアを他の会社に送り出すSES(エスイーエス)は、中小〜中堅の会社がたくさんあるエリアです。

天気マーク=当サイトの見通し

エリア見通し理由(当サイトの見方)
SIer晴れDXの需要が続く
ITコンサル晴れDXの需要が続く
SaaS晴れ規模はまだ小さいが伸び盛り
通信キャリア晴れ時々くもり安定している
Web・ネット晴れ時々くもり安定している
SESくもり会社による差が大きい

天気マークは当サイトの見通しで、将来の業績や働きやすさを保証するものではありません。同じエリアの中でも、会社によって大きく違います。

お金の流れ:多重下請け構造

多重下請け構造の図。発注する会社から元請けSIer、二次請け、三次請けへと仕事が流れていく様子
大きなシステム開発では、仕事が上から下へ流れていくことがある

大きなシステム開発では、発注した会社(銀行・役所・メーカーなど)から、全体をまとめる元請けのSIer、二次請け、三次請けへと、仕事が下へ流れていくことがあります。これを多重下請け構造と呼びます。

下の層ほど間で手数料が引かれるため、同じ仕事でも給料が上がりにくくなりがちです。だからこそ、入る前にその会社がお金の流れのどの位置にいるかを知っておくことが大切です。

3つの働き方を比べる

自社開発受託開発SES
どんな仕事自社サービスを作る頼まれたシステムを作るお客さんの会社に常駐
身につく力サービスを育てる力いろいろな業界の経験会社で差が大きい
未経験の入りやすさ△ 少なめ○ ふつう◎ 入りやすい

入りやすさと身につく力は、トレードオフになりやすい関係です。SESは未経験でも入りやすい一方で、会社によって経験できる仕事の質に差が大きいのが特徴です。

IT人材はどれくらい足りない?

最大 約79万人
2030年のIT人材の不足(経済産業省の試算)

経済産業省の試算では、2030年にIT人材が最大でおよそ79万人不足するとされています。ただしこれは2019年時点の試算で、前提によって約16万〜79万人と幅があります。また、すべての仕事が足りないわけではありません。

伸びている分野・置きかわりやすい作業

需要が伸びている分野(例)置きかわりやすい作業(例)
クラウド決まった手順のくり返し
セキュリティ単純なテスト・入力作業
データ分析マニュアルどおりの運用
AIの活用・導入

決まった手順をくり返すだけの作業は、自動化やAIに置きかわりやすい分野です。入ったあとにどのスキルを伸ばすかが大事になります。

未経験からのおすすめルート

  1. 経験を積む:研修がしっかりした受託開発やSESの会社で、2〜3年かけて実務経験を積む。
  2. ステップアップ:その経験をもとに、自社開発やSaaS企業へ移る。ここで年収が上がる人が多い傾向です。
  3. 別の入り口も:プログラミングではなく、IT営業・カスタマーサクセス・社内SEから入る道もあります。

エンジニア以外の職種から入り、業界に慣れてから職種を広げる道もあります。

避けたい会社の3つのサイン

  1. 研修が「動画を見るだけ」で、現場に出るまでのサポートがない
  2. どんなお客さんの、どんな仕事をしているのかを、面接で具体的に説明できない
  3. 自分の会社が、お金の流れのどの位置(元請け?三次請け?)にいるのかを答えられない

面接では、こちらから質問して確かめるのがおすすめです。

年代別の作戦

年代おすすめの狙い方
20代前半未経験でもエンジニア採用のチャンスが多い時期
20代後半今の仕事の経験 × IT(例:営業経験 → IT営業)
30代業界知識を活かしたIT企業の企画職・社内SE

まとめ

  • IT業界は「6つのエリア」と「お金の流れ」で見ると、入るべき場所が見えてくる
  • 推計年収は全産業より高め。ただし会社の位置や働き方で大きく変わる
  • 入社前に、その会社がお金の流れのどこにいるかを面接で確かめる

気になるエリアが見えてきたら、転職サービスで実際の求人や、自分の市場価値を確かめてみるのも一つの方法です。

出典・注意書き

基準日:2026年10月時点(各社の売上は2026年10月25日に確認)

国の統計

各社の売上(決算短信・有価証券報告書・決算説明資料)

資本関係

ご注意

  • 数字は2026年10月時点で確認できた公表値です。推計年収は業界全体の平均で、個人の年収を示すものではありません。職種や会社によって大きく異なります。
  • 天気マーク(見通し)は当サイトの見方で、将来を保証するものではありません。
  • 富士通・NECの売上は、IT以外の事業も含む全社の数字です。決算期は会社ごとに異なります。

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